RSS | ATOM | SEARCH
春巻き
 
ずっと前、とある将棋サロンで指していたときのこと。
 
 
対局しているおじさんが、おもむろに缶ビールを取り出してプシュッ。そして、ぐびっ。それまで手にしてなかったので、きっとポケットに入れておいたのでしょう。
でもおじさんは一口だけで、あとは駒台の脇に置きっぱなしです。気が抜けちゃうなぁと、飲んでないこちらの方が心配してしまいます。
 
それから間もなくして、となりの中華屋さんの出前が入ってきました。そしておじさんに一品、ラップをかけたお皿を渡したのです。
出前   「××円です」
おじさん 「あいよ。じゃあこれで」
慣れた感じの代金のやりとりがあって、おじさんはラップを取りました。
そこに乗っていたのは春巻き。私はなんとなく、しみじみとした気分になりました。
 
なんだかいいじゃありませんか。中華屋のサイドメニューといえばギョーザかシュウマイが定跡ですが、でもおじさんは春巻き。そしてそれをつまみにして、持参したビールを飲むのです。のんびり将棋を指しながら。
きっとおじさんの、ちょっとした至福のひとときだと思います。おじさんは、さして読みを入れてない手をぽんぽんと指していきます。勝ったとか負けたとかなんて、あんまり関係ないのでしょう。
休日の穏やかな天気のお昼で、端っこに置かれたテレビでは、お馬さんたちがとことことパドックを周っています。私もおじさんに付き合って、プシュッとやりたくなっちゃいました。でも残念ながら私の持っているのは缶コーヒー。どうにもつまらないもの飲んじゃったなぁと思いました。
 
その日はおじさんにペースを合わせ、私もぽんぽんと指していったのでした。
 
 
author:あらはた, category:, 23:45
comments(0), trackbacks(0), - -
居酒屋Pにて

近所にある居酒屋Pには色々なひとが来ます。近くの外国人学校の先生が冬でも外のテーブルで生ビールをあおっていたり(見ているこっちが寒い)、近くの大学の学生がギターを弾いていたり、近所に住むへんなおじさんがiPod touchで「渡辺明の詰将棋 中級編」を解いていたりします(これは私)。


いい居酒屋は大抵そういうものでしょうが、このお店も初めて会う隣の席のひとと話が弾むことがあります。考えてみれば今の世の中で見ず知らずの人と会話が成立する場所なんて、居酒屋くらいのものではないでしょうか。言い過ぎかなあ。でも、見ず知らずの人に対する警戒感はどんどん高まっているような…
そういう話ではなかった。とにかくその居酒屋Pに昨年の十二月二十四日に言ったのですが、これがすごかった。クリスマスイヴということもあってお客さんが大入り、私は九時過ぎに行って一杯だけ飲んで帰るつもりが気がついたら二時半まで外資系の企業にお勤めの方や院生さんとあれやこれや話したり、ロシア民謡の弾き語りを聴いていたりしました。


あまりに話が弾んだので帰り際にメールアドレスを交換しようということになり、携帯電話を取りだしたら、院生さんが
「あ、詰将棋ですね」
そう、私の携帯電話は待受画像が詰将棋なのです。聞けば高校で将棋部だったそうで、今度会う時は一局指しましょうといって別れました。


しかし、居酒屋で交換したメールアドレスほどその後実際に使われることが少ないものもなかなかないわけでして、そんなことがあったことも忘れかけていた今日、こんなメールが。


「論文を一本書き終わりました。久々にPに行きます。よろしければご一緒しませんか」


布盤を挟んでさっそく一局。彼はレーベンブロイ(日本ではアサヒがライセンス生産してます)を、私はホットワインを飲みながら。相振り飛車はこちらの見落としで一瞬で終わってしまい、二局目は三手目に角交換され、以下手将棋でボコボコにされました。学生将棋を指してたひとは鍛え方が違いますねえ。


お店の人に文句を言われなかったかと心配なさる方もいらっしゃるかもしれませんが、その点は大丈夫。マスターは囲碁を打つので時折面白そうに盤面を眺めていて、帰り際には私の緩手を二三指摘してくれました。

author:はくた, category:, 00:00
comments(0), trackbacks(0), - -
中野さんと呑む その3
 
中野さんの肩越しにあいさつする女性を見た我々は、てっきり中野さんが愛人でも連れて来ちゃったのかと思いましたが、これがなんと中野さんの奥様。我々一同、ゲゲッ! です。
そこから奥様も交えて、さらに話がはずみます。
 
中野さんはいつものように日本酒。樽酒のぬる燗です。白田青年はメニューに電気ブランがあるのを見つけて、それを頼みます。私は生ビール一本。開放感のあるお店なので、生ビールがことさらおいしく感じるのです。
将棋のこと、棋士のこと、近代将棋誌のこと、編集長というお仕事のことなど、話は尽きません。酒のおかわりもハイピッチです。
中野さんの奥様は一時間ほどで帰られ、その後私たちはさらにピッチを上げます。
 
それにしても、いい酒場です。昭和の定食屋という雰囲気の店内に、呑み助たちがぎゅっと押し込まれているよう。テーブルごとに、仲間ごとに話は盛り上がっていますが、それがけっしてやかましくない。入って来る客も常連なのか、満席なのを見ると、気さくに、また来るよ〜とでも言うように帰って行きます。
 
中野さんのお酒は、究極の受け将棋とでも言いましょうか。傍目にはい〜い感じで酔っているように見えるのですが、そこから崩れないのです。そしてお開きまで、二枚腰で乗り切ってしまうのです。
その日もそんな感じでした。そして気付けば閉店間際。お客さんもどんどん帰って行きます。私たちももう一杯ずつ呑んで帰ろうということにしました。
白田青年と中野さんは電気ブランを頼み、私と妻はビール。店内がすいたからか、すぐ運ばれてきます。すると中野さん、なんとその電気ブランを一気飲み! クーッと空けてしまったのです。我々はゲゲッという声すら出ずに、目を丸くしてしまいました。いやぁ、本当にお強い。
 
お店を出るときは、中野さんのお帰り〜、ということで従業員の皆さまが表まで送ってくれました。それほど大事なお客様なのです。
そして駅まで歩きます。中野さんの千鳥足もまたすばらしい。酒飲みにクラスがあったら、間違いなくA級です。
 
我々酒飲みのC2級は、十条駅で深く中野さんに礼を言い、埼京線の上りホームへ向かって行きました。
この晩は私にとって、強く心に残る酒紀行となったのでした。
 
 


author:あらはた, category:, 23:17
comments(0), trackbacks(0), - -
中野さんと呑む その2
 
改札で待っていると、ゲゲゲの中野さんが登場。酔ったときに「ゲゲッ!」と味のある一言を付け加えるのでゲゲゲの中野さん。今年の流行語大賞のニュースを聞いて、私はまっ先に中野さんを思い浮かべました。
 
いつもと同じ、穏やかな表情。
中野さん、将棋を指しているときも穏やかで優雅。それでいて強いので、相手は困ってしまいます。
 
白田さんと私の妻も到着して、4人で酒場に向かいます。
向かうはあの「斎藤酒場」。あの、と言っても私は今回初めてなのですが、酒飲みには広く知られたお店です。
店は満員だったのですが、中野さんのカオで人数分空けてくれました。詰めてくれたのはヒップな感じの若者だったのですが、どうぞどうぞと気さくにどいてくれます。
まずは生ビールで乾杯!
十条の街の雰囲気、中野さん、斎藤酒場の店員さん、若者たち。この日はすべてが心地よい。年期の入った分厚い木目のテーブルまでが暖かく迎えてくれているよう。思わず「よぉし、メニュー片っ端から持ってこい〜!」などと調子に乗って言いたくなりますが、それをぐっとこらえ、注文は中野さんにゲタを預けます。
ゲゲゲの中野さんはまず串カツとポテトサラダを注文。串カツは一人一本と少なく感じましたが、「食べてみて、気に入ったらまた頼みましょう」。うーん、この力まぬ姿勢をぜひ見習いたいものです。
中野さんは穏やかな口調でノンビリと話します。しかしその内容はさすが棋界に精通している方、聞いているこちらの方がゲゲッとなってしまうのです。
 
そこに、美人の小柄な女性が登場。中野さんの横にぴたっと付いたのでした。
 
   (続く)
author:あらはた, category:, 17:06
comments(0), trackbacks(0), - -
中野さんと呑む その1
 
ペンクラブの酒担当、あらはたです。
 
先日、白田青年と新宿の「沼田」で立ちながら呑んでいたとき、ひとつ幹事の中野さんとじっくり呑んでみよう、そして語ってもらおう、という話になりました。幹事会後の飲み会では玄人はだしの噺家さんもいて、その人の独壇場になってしまうことが多いので、なかなかお話しができなかったからです。
 
中野さんは元近代将棋の編集長で、私にはあこがれの存在です。当時私は毎月、発売日の25日を楽しみにしていました。今でもバックナンバーを保管しています。
白田青年が中野さんと連絡を取り、某日の土曜日、我々が中野さんの主戦場である十条に乗り込むことで話がまとまりました。それ以降、私は指折り数えてその日を待ちました。
 
そしていよいよ当日。私は毎回酒量で中野さんに負けてしまうので、まず一人で都内のロックバーで引っかけて行くことにしました。先行策をとったのです。そこで一人静かに黒ビールを、矢倉はビートルズで振り飛車はストーンズだよなぁ、などと思索しながら2杯空け、十条に乗り込む時間となったのでした。
 
早めに着いた私は、ふらふらと十条の駅前を散策しました。
風情のある街です。大規模なスーパーがなく、商店街が中心となる街。酒場も一軒一軒が小さく、外から談笑している様子が見えます。平日、会社帰りの人たちで賑わうときにもう一度歩いてみたくなりました。
駅の横には鉄道の大きな車輪があります。以前祐天寺でも街中に置いてあったのを見つけたのですが、オブジェとしては実にいい雰囲気を醸し出し、心安らぐものです。
そして待ち合わせの時間が迫り、私は改札へと向かったのでした。
 
   (続く)

author:あらはた, category:, 11:06
comments(0), trackbacks(0), - -
幹事会のあとは…
 
幹事会のあとはだれが言いだすわけでなく、決まって有志で呑み屋に向かいます。
発送作業の疲れからか、そこそこの人数で固まって歩くからか、どういうわけかその向かう様はだらだら、ばらばら。もう既に酒が入っているかのよう。
そして、まぁいつも決まった駅の決まったお店であるはずなのに、必ず地下鉄の出口で迷うのです。えっと、この出口だったっけ、と。
そんなこんなで、ようやく安酒場にしけ込むことができます。
 
上座下座など特に気にすることもなく、全員席に着いたところで乾杯。この最初の一杯は、定跡中の定跡で生ビールです。ここまではわりとスムーズに進みます。どうしてなのか人数分より生ビールが多く運ばれてきますが、その程度は問題ありません。早く飲み干した人が受け持てばいいだけの話です。むしろ注文の手間が省ける。しかしその後のつまみを頼む段、こちらの方がちょっと問題なのです。
めいめいが勝手に店員さんに注文するので、声が混ざり合って店員さんが聞きにくいこと。
「えっと、ポテトフライもですか。それを2つ?」
などと注文の一つ一つを確認されます。幹事の中には偏食の人もいて、きらいな物を注文されたときにケチをつけます。
「おい、鳥のカラアゲなんかとるなよ」、などと。それもまた店員さんを混乱させます。
そうかと思えばメニューをにらんで、「それと、あとねぇ…」という言葉のあとに長考に入り、他のテーブルでも声が掛かっている店員さんはさらに困惑した表情をうかべます。私はいつも思います。このテーブルでの店員さんの滞在時間って長いなぁ、と。
 
ようやく皆で、「ま、とりあえずそんなところで」と注文を打ち切りますが、それは「とりあえず」の量を超えているのです。しかも軽いもの重いもの、ナマ物揚げ物関係なくワッと頼んでしまうので、なかなか注文の品が出て来ません。その間、淡々とビールだけですごすことになります。
ようやくつまみの第一弾が運ばれて来る頃には皆さん2杯目に入っています。人によっては3杯目も。急戦調に日本酒に突入する人もいて、今日のよれよれ大賞はあの人だなぁと、私は密かに思うのです。
 
そしてようやくつまみやってくるのですが、ガジガジ流にこれでもかこれでもかと、頼んだつまみが一点めがけて押し寄せてくるのです。テーブルには受けるスペースがなくなり、せっかく時間をかけて選んだつまみを、スペースを空けるためだけに口の中にぽいぽい放り込むことになるのです。
そのつまみラッシュがすぎると、ほとんどつまみの注文はしなくなります。今度は酒の注文が中心となります。これがけっこうハイペースなのです。
 
さて、皆でよれよれになったところで会計です。安酒場なので安く済むのは助かるところです。
人数で割って皆から徴集して会計するのですが、でも、その支払った金額を翌日思い出せない人もいるようなのです。
 
幹事会のあとの飲み会は、そんな、「ザ・昭和!」といった感じのものなのです。小細工なしで酒に正面からぶつかっていくような。でも私はその雰囲気が大好きで、毎回必ず加えてもらっているのです。実に愛すべき、我ら幹事の飲み会なのです。
 
 
author:あらはた, category:, 23:27
comments(0), trackbacks(0), - -